現場のリアル2026-07-10 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

eラーニング企画職の現場で、AIは実際どう使われているか

この記事の要点

「教材づくりがAIでかなり早くなったんですが、逆に自分の仕事って何が残るんだろうと不安になります」。eラーニングの企画・運営を担当している方から、こう相談されたことがあります。

率直に言うと、この不安は的を射ています。教材制作という工程は、確実にAI活用が進んでいます。ただ、誤解がないように申し上げると、それは「eラーニング企画職の仕事がなくなる」という意味ではありません。工程の構成比が変わっているだけです。今回は、人材紹介の現場で見聞きした一次情報をもとに、eラーニング企画職の実務でAIがどう使われているかを工程ごとに整理します。

0. 前提 — 教材制作から企画・分析へ比重が移る

まず大きな前提から。eラーニング企画職の仕事は、大まかに「教材制作」「コース設計」「運営・分析」の3つに分けられます。このうち生成AIの活用が最も進んでいるのは教材制作の工程です。一方、コース設計と運営・分析は、依然として人の判断に依存する部分が大きく残っています。

1. AI活用が進んでいる工程 — 教材テキスト・字幕・確認テスト

教材テキストの初稿作成。既存の研修資料やマニュアルを読み込ませ、eラーニング用に構成し直したテキストの初稿を生成AIが作る運用は、多くの企業で広がりつつあります。動画の字幕生成も、音声認識と生成AIの組み合わせで実務コストが大きく下がった工程です。確認テストの問題文作成も、教材内容を読み込ませれば選択式の問題を複数パターン生成できるようになっています。これらは「素材がある」「正解の型がある」工程であり、AIの得意領域と重なります。

2. AI活用が進みにくい工程 — コース全体設計と難易度調整

一方で、学習コースの全体設計は依然として企画担当者の判断が中心です。どの順序でどのコースを受講させるか、対象者の職種・経験年数によって難易度をどう変えるかは、その企業の人材育成方針や対象者理解に基づく判断であり、汎用的な正解がありません。受講データを踏まえたコース改善の判断も同様です。受講率や理解度のデータをAIが集計・可視化することはできますが、「このデータから何を改善すべきか」を判断し優先順位をつけるのは、企画担当者の役割として残ります。

3. 実例で見る — データ分析に踏み込んだ企画職の評価

Kさんは、社内向けeラーニングの企画・運営を担当していました。AI活用で教材制作の時間が大幅に減った後、Kさんはその時間を「どのコースで受講者の離脱が多いか」の分析に充てました。分析の結果、特定のコースの中盤で離脱が集中していることが分かり、その部分の構成を見直したところ、完了率が明確に改善しました。この実績により、Kさんは複数コースの改善を統括する役割を任されるようになりました。教材を作る速度ではなく、データを読んで改善する力が評価された事例です。

4. eラーニング企画職に今後求められる役割

教材制作の自動化が進むほど、企画職に求められるのは「何を作るか」ではなく「作ったものがどう機能しているか」を見る力です。具体的には、受講率・理解度・行動変容といった指標を設計し、その指標をもとにコースを継続的に改善していくデータドリブンな企画力です。あわせて、AIが生成した教材の品質を検証する目——不正確な情報や、対象者に合わない表現がないかを見抜く力も重要になります。

5. AIが生成した教材を検証する目という新しい役割

もう1つ、AI活用が進むほど重要度が上がる役割があります。それはAIが生成した教材の品質を検証する目です。生成AIは既存の資料から一定の質のテキストを作れますが、その企業固有の用語や、対象者の実務レベルに合わない表現が混ざることは珍しくありません。たとえば新入社員向けの教材に、中堅層向けの専門用語がそのまま残っていたり、古い制度の説明が更新されずに引用されてしまったりするケースがあります。こうした誤りをそのまま公開してしまうと、受講者の理解を妨げるだけでなく、社内の信頼を損ないかねません。企画職がAIの出力を鵜呑みにせず、対象者の目線でチェックする工程を挟めるかどうかが、教材全体の品質を左右します。

この検証の役割は、単なる誤字脱字チェックではありません。「この説明は、対象者がこれまでに学んだ内容と整合しているか」「この例は、実際の業務のリアリティに合っているか」という、教材設計全体を見渡す視点が必要です。AIが素材を作る速度が上がるほど、この検証工程にかける時間の比重を増やすことが、結果的に教材全体の質を守ることにつながります。

6. 実例で見る — 検証工程を仕組み化したケース

Oさんは、複数のeラーニングコースを企画する立場でした。AIによる教材生成を導入した当初、検証を担当者の個人的な感覚に任せていたため、教材ごとに品質のばらつきが生まれていました。そこでOさんは、「対象者レベルとの整合性」「実務例のリアリティ」「古い情報の混入チェック」という3項目からなる簡単な検証チェックリストを作成し、教材公開前に必ず確認する運用に変えました。この仕組み化によって、教材の品質が安定し、受講者からのクレームも明確に減りました。個人の感覚に依存していた検証作業を、誰でも実行できる仕組みに落とし込んだことが、Oさんの評価を高めた要因です。

まとめます。①教材テキスト・字幕・確認テストの作成は、eラーニング企画職の実務でAI活用が進んでいる工程。②コース全体設計・難易度調整・受講データを踏まえた改善判断は、依然として企画担当者の役割として残る。③AI活用が進むほど、企画職にはデータドリブンなコース改善力が求められるようになる。

教材制作にかけていた時間が減るのは、脅威ではなく機会です。空いた時間を、コースの改善という次のレイヤーに使えるかどうかが、これからのeラーニング企画職の市場価値を分けます。率直に言うと、この役割転換に不安を感じる方は少なくありません。ただ、データを読む力は特別な資格が必要な専門技能ではなく、日々の小さな観察の積み重ねで育っていくものです。まずは自分が担当する1つのコースについて、受講率と離脱ポイントを確認するところから始めてみてください。小さな分析の積み重ねが、やがてコース全体を見渡す企画力に育っていきます。上司や同僚に相談しながら、まずは1つのコースの改善サイクルを最後までやり切ってみることが、次のキャリアステップにつながる最初の一歩になるはずです。分析結果を社内で共有し、他の担当者にも同様の視点を広げていくことができれば、部門全体の教材品質を引き上げる存在として評価される可能性も出てきます。この積み重ねの先に、人材育成部門全体の効果測定を担う専門職としてのキャリアも見えてきます。データを読む力は一朝一夕に身につくものではありませんが、今日から始められる小さな一歩は必ずあります。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずは15問の適性診断で、自分がeラーニング企画型に向いているかを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. eラーニング企画職の実務でAIはどこまで使われているか

教材テキストの初稿作成、動画の字幕生成、確認テストの問題文作成といった定型的なコンテンツ制作工程では、生成AIの活用が広がっています。一方、学習コースの全体設計、対象者に合わせた難易度調整、受講データを踏まえたコース改善の判断は、依然として企画担当者の役割です。

Q. AI活用でeラーニング企画職の仕事はどう変わるか

教材制作の作業時間が減る一方、受講データの分析とコース改善提案という役割の比重が増えます。単に教材を作って配信するだけでなく、受講率や理解度のデータを見て「このコースのどこで離脱が多いか」を分析し改善する、データドリブンな企画力が求められるようになります。

Q. eラーニング企画職からのキャリアアップの方向性は何か

1つは学習効果測定の専門性を深め、人材育成部門全体の効果検証を担う方向。もう1つは、複数のeラーニングコースを束ねた人材育成戦略の企画立案に関わる、人材育成部門マネージャーへの方向です。どちらもデータに基づいて語れる力が土台になります。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

この記事を、eBookで持ち帰る。 本記事をスライド形式のPDF(16:9・全13ページ)に再構成しました。お名前とメールのご登録だけで、その場でダウンロードできます。

あなたの経験は、どのタイプに向いているか

15問の適性診断で、AI時代の研修キャリア座標と強みの再定義ができます。登録不要・約5分・回答は端末内にのみ保存。

適性診断をやってみる → キャリア面談をする →

あわせて読む